イノシシの背ロースを低温調理してみた

ジビエ肉でもレア料理好きの私ですが、さすがにイノシシはレアでは食べれません。
まあレアは無理ですが、安全に食べられるギリギリのレア、いわゆるミディアムレアのイノシシ料理を、今回調理実験してみたいと思います。

でもですね、具体的にどれほどの熱量で抑えればよいのかの、温度の目安がわかりません。
わからないからググってみました。

そうすると、厚生労働省は、
にて、
中心温度が75度で1分以上、またはこれと同等以上の加熱
と明確に述べてます。
で、同等の加熱とは、
にて、
中心温度63度で30分以上
と述べられています。

なるほどなるほど。

さてさて、
ある程度の塊肉の場合、急速に中心温度を上げることは困難です。
逆に言うと、一度上げてしまえば、急速に冷めることも困難です。
例えば、一旦、中心温度を70度まで上げてしまえば、熱して冷める往復の時間を考えると、63度で30分以上の条件は軽々クリアできるのではないかと。
まあこれは私の勝手な推測ですが、でも今回この推測に基づいて、
中心温度70度で、保温調理を行いたいと思います。


料理するのは、推定100㎏のオスイノシシの背ロースから腰の部分です。
このイノシシを獲った顛末はこちらから。
DSC06501.JPG
イノシシの部位でも特上の所ですが、いかんせん大きなオスのイノシシ肉です。
通常なら、調理法において固さとの戦いになる素材です。

このオスイノシシのすね肉という、どちらかというと底辺の素材を使った煮込み料理は完全勝利を得ました。
今回は焼き料理で、勝利を得られるかどうかの実験料理の企画です。


今回、まず興味本位で重さを量ってみました。
DSC06502.JPG
845g
ほぼ1㎏弱の背ロースです。結構な量です。

さて、どうしようか悩んだんですが、とにかく塩を振って、手で揉みこむ。塩振って揉みこむ、その繰り返し。
最終的に通常よりも多めの塩を肉に与え、手の温度で室温よりも高い温度に肉を持っていき、肉全体に塩をなじませる作戦。
DSC06503.JPG

で、塩しかしていない状態で脂身を下にして焼き始めます。
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3分ほど焼いてから、赤身部分を直接焼いていきます。
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赤い部分がなくなるように、フライパンに押し付けるように焼きます。
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焼けたら、いったん肉を取りだして、
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フライパンの余分な油をふき取り、肉を戻して、皮目のほうに胡椒とスパイスを投入。
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通常ですね、本やネット情報見ると、焼き上がりをアルミホイルで包んでフライパンに戻して放置って調理法が多いのですが、アルミホイルって、どうも視覚的に熱量がわかりにくいんですよね。
で、受動的ではなく能動的に保温する作戦。
簡単に言うと蒸します。多少の日本酒投入。
DSC06509.JPG
火にかけて沸騰したら、蓋してきわめて弱火へ。
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感覚的に、常に水蒸気が上がるような蒸し焼きの状態ではなく、いったん100度まで上がったフライパンの中が、70度以下まで下がらないくらいに温め続ける感じで火を入れます。
まあ感覚です。フライパンの中の温度なんか、わかるはずがありません。
とりあえず、この状態で20分放置しました。

で、20分後に塊肉の中心温度を計ってみると・・・。
DSC06511.JPG
ああ、70度超えました。合格ですね。
で、蓋閉めて、火を止めて、温かいIHクッキングヒーターの上、このままの状態で1時間以上放置しました。
63度30分の条件は文句なくクリアしてます。


さて、放置した肉を切ってみてビックリ!!
DSC06515.JPG
完璧なミディアムレアでした!!
ただ切ると、赤いドリップが・・・でも透明ドリップです。
頭ではわかってます、野生肉の食肉基準をクリアしてると。
でも自分で作っておきながら、ここまで赤い豚肉料理を作ったことがありません。
豚で経験がない分、野生のイノシシでここまで赤くて良いのか?!
さすがにもう少し加熱したほうが良いんじゃないか?!
って迷いに迷ったのですが、でもでも国の基準は満たしてます。
意を決して、試食!!

?!

いやあ美味い

散々今までイノシシ料理を作ってきましたが、
これは絶品です!!
野生臭はまるでなく、柔らかく、本当に美味しくて、ローストポークというよりも、赤身のローストビーフに近い味でした!!
そして本当に、赤身肉の純粋な旨さ!という点では、牛肉に引けを取らない赤身の旨味を感じました!
すげえ!イノシシ!!

すいません、あまりの美味しさに、最終的に盛り付けた写真を撮り忘れてしまいました。
切り分けている途中写真がこちら。
DSC06516.JPG
切り分けている端肉を味見してて、本当に最終写真を撮り忘れてしまいました。本当にすいません!

でも、本当に、早く食べたくなるほどの旨さだったことだけは保証します!!



さて、でもですね、美味しかったのは赤身部分だけで、脂身と筋膜はこの程度の調理温度では固すぎて食べれる感じではありませんでした。
上記の最後の写真は、実は味見後に脂身と筋膜を切り分けている写真です。

切り分けた脂身の料理は次回紹介します。


とにかく今回は、イノシシ肉の赤身肉の強烈な旨さのポテンシャルとその可能性を垣間見ました。

調理し終えてから振り返ると、
「先に脂身外して脂身から料理したほうが手順的に効率的だったのでは・・・。」
っても思ったのですが、背ロースをそのまま脂身と筋膜を付けた状態で火を通したことで、赤身肉の縮みを最小限に抑え、かつ油や水分の供給源となり、赤身肉を最高の状態で火が通せたのかもしれません。

いやあ!イノシシ料理の新しい扉を開いたような気がします!






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