以前、福井県には本当に美味しいフレンチレストランがあるという記事を書きました。
その「ル・ディアマンローズ」に先日食べに行きました。
なんというか、いろんな意味でご褒美が欲しかったんですよね。
いろんな意味で、頑張っている自分に対してね。
いつもいつも、この店の料理には驚かされるんですが、いやあ!今回もすごかったです!
串カツ風に見えるけど、野菜だらけのエスカルゴ。
酒粕とニンニクを用いたデザート。
エグミの強い青野菜にアクセントを効かせた鯛料理。
赤と白の二層の人参ムース。
で、メインなんですが、いくつか選べる中で私は「シカ」を選びました。
そのシカ料理が、まあ本当に今まで食べたシカ料理の中でダントツでレアで、ダントツで美味しい料理でした!
正直、衝撃でした!
で、申し訳ないんですが、あまりの衝撃で、写真を撮ること自体忘れてしまいました。
カメラはポケットにあったのですが、目の前にあるシカ料理を食べることに集中しすぎて、雑務を忘れてしまいました。
で、食後、シェフと話す機会ができまして、その内容がハンターの皆さんにもなかなか有用な情報だと思いましたので、写真はありませんが、私の文章力だけでお伝えしたいと思います。
まず今回の食材が、
「福井県の殿下(でんが)地区で獲れたシカのもも肉」
って話を聞いていろいろと驚きました!
今までの経験上、フレンチで美味しかったシカ料理って、全て北海道の「エゾジカ」だったんです。
それが生まれ故郷で獲れたシカ、それも猟師が獲ったシカ。
普通の人間なら、何も響かないかもしれませんが、一応猟師の端くれである私には、こみ上げる想いというのはありました。
さて、正直私も福井産のシカなら、素人ながらも料理経験あります。
この記事はちゃんと火を通したシカ料理記事
この記事は危険性を覚悟でシカのたたき料理を作った記事
やっぱり料理して食べてみた経験上、私の中で食材的に「シカ」と「マグロ」はほぼイコールの位置となる食材です。
いわゆる火を通せば不味くなる食材だけど、生食だと他の追随を許さないくらいの美味がある食材という意味です。
まあシカの場合、純粋な赤身肉なので「マグロ」よりも「カジキ」のほうが、見た目は近いかもしれません。
でも食味はカジキのような淡白さではなく、マグロの赤身のようなきちんとした旨味がありますね。もちろん生食の話です。
さて、私の中で、火を通したシカ料理の限界ってあるって思っていたんですよ。
それが今回、ル・ディアマンローズのメインのシカ料理食べて、価値観を根底から覆されましたよ!
火入れする技法しかないフランス料理でも、めちゃくちゃ旨いじゃん!シカ!
・・・でも、店の料理で見たことないほどの赤身だけど、ドリップがまるで出ていないってことは、きちんと火入れが終わっているって証拠だよなあ・・・どうやったらこんな感じになるのかなあ・・・。
そんな疑問をシェフにぶつけて帰ってきた答えが目から鱗でした。
シェフ
「実は先にマリネ液に付けた状態で低温で火を通してます」
morimori
「え?!どの本読んでも、最初に肉汁を閉じ込めるために表面を焼くって書いてますから、俺はまず焼いてました。」
「表面焼いても、ゆっくり加熱した段階でドリップって出るでしょ?」
「・・・まあ確かに、低温加熱したときドリップが肉の表面上に湧き出ます。」
「先に焼いてもドリップって止まらないんです。だったら先にマリネ液に付けた状態で低温で火を通してさえいれば、火入れは終わるし、なによりお客さんが来てからは、表面を焼く作業だけで終わるので時間が読みやすくなるんです。」
「ああ!なるほど!!それはすげえ!」
まあ、シェフの言葉は私なりに置き換えて、ブログとして伝えやすい言葉として書いてますので、多少の聞き間違え、表現間違えは、ご了承願います。
とにかく私が驚いたのは、ドリップを止めるために低温調理が先という点です。
これは本当に本当の意味で目から鱗です!
つまりきちんと基準通りの火入れさえ先にしておけば、E型肝炎ウイルス等のジビエ肉を食べる問題が一気にクリアできて、ほぼ生に見える肉でも基準はクリアって話です。
あとは香ばしさを付け加えるための焼きの作業があるだけ。
これはシカ肉やイノシシ肉だけの問題ではなく、通常生食は絶対NGの豚肉でも、生っぽく食べれる方向性を示した話だと思うんです。
例えば豚の塊肉なんて、イノシシの塊肉よりも激安で手に入ります。
そんな豚肉の塊肉が、美味しく生っぽく食べれるなら、それはそれですげえ話だと、私は考えてます。
だいたい、どれもこれもジビエ肉って、無神経に火を通すと、途端にパサパサで臭うんですよね。
一方で、お役所的なところからの意見で言うと、野生肉だから病原菌を死滅させるために、かっちりきっちりちゃんと必要な分は火を通せと。
で、ジビエを使って美味しい料理が食べたいと・・・。
そんなん!フライパン一枚でできるか!!
って話です。
そうです、フライパンのみ、鍋のみで、難しい食材を調理しようとするから難しいんです。
まずは単純にレアギリギリに低温の火入れだけしてしまいさえすれば、あとはどんな形で料理しても安全というわけなんですね。
今回のシェフの話は、ジビエ肉全てを美味しく料理できる、根幹のヒントをもらったような気持ちになりました。
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