低温調理における中心温度を素早く上げるための考察

低温調理では、塊肉の中心温度に気を使います。
そしてその中心温度を下げれば下げるほど、安全面において加熱時間が比例的に長くなります。

今回は低温調理器を使って計算上で、
「中心温度を60℃に最短で上げる方法」
を考えていきたいと思います。

まずはこの表をご覧あれ。
解凍した肉が水温より0.5℃低くなるまでのおおよその加熱時間
screenshot.1.jpg
より引用

簡単に言うと、板状の塊肉厚さ50㎜を、低温調理器60.5℃設定で加熱した時、中心温度が60℃になる時間が、3時間半ということです。
60℃3時間半というのは覚えておいてください。

さて、今回の私の考察は、
60.5℃ではなく、もっと高い温度に設定したほうが、中心温度が
3時間半よりも早く到達するのではないか?
っていう計算実験です。






さてまずは、「室温肉」ではなく「解凍肉」の元々の温度が気になりますね。
まあ一般的には解凍の硬直が溶けたら解凍された肉って考えると、
解凍肉の温度=10℃
としましょうか。ややこしくならないように、肉中心温度も10℃と仮定します。
で、先ほどのデータを引用すると、
50㎜板状肉の中心温度を60℃に上げるなら、60.5℃設定で3時間半でした。
このデータに基礎となる温度設定が書かれていないので、基本的にはどの温度設定でも、だいたいそれくらいの時間がかかると読み替えることができます。
つまり、
50㎜板状肉の中心温度を75℃に上げるなら、75.5℃設定で3時間半かかるということです。


では低温調理器の温度設定を上げることにします。
まあ当たり前ですが、温度を上げれば上げるほど中心温度到達時間が早くなりますが、必要以上の高熱による肉表面の変性が酷くなります。結果、中心部だけは低温調理状態ですが、肉表面は低温調理とはかけ離れた状態になるでしょう。
つまり、温度を上げるといってもあまり上げられません。
いろいろ考えましたが、肉表面の変性に影響がないように、低温調理器具の設定を、
64.5℃にします。

さて、何度も言いますが、中心温度64℃まで3時間半かかります。
で、最初の解凍肉の中心温度を10℃としてるので、3時間半かけて64℃になるということです。

で、これも10℃から64℃まで直線的に温度が上がると仮定しますね。

じゃあ計算します。
中心温度が10℃から64℃まで、54℃変化します。
で時間は、3時間半つまり210分かかります。
じゃあ1℃上がるのにどれだけの時間がかかるかというと、
210÷54=3.8888・・・・
1℃上がるのに約4分かかることがわかります。
この式に50をかければ、50℃つまり中心温度が60℃に達する時間が計算できます。
210÷54×50=194.44・・・・・

結果!
3時間14分!!
16分の短縮に成功・・・



正直、低温調理器において、設定温度を4℃上乗せするってことが時短につながると思っていたのですが、ほぼほぼ意味がありませんでした。
逆ですね!
低温調理器は、時間がどれほどかかっても構わないから、中心温度を狙った温度に持っていく調理器です。
低温調理器時短は、相反する概念だということを、まざまざと思い知らされました。


低温調理器は、
「肉の種類で中心温度を決めて、肉の厚みを測り、そして加熱時間を設定する」
という、物理調理器ですね。

なるほどなあ・・・面白い調理器具を購入したかも・・・。

肉の結合組織コラーゲンは60℃ほどから収縮が始まるのですが、65℃付近でさらに収縮するために急激に硬くなります。厚生労働省からの指導もあり、中心温度63℃30分を守りながら、65℃未満という微妙な火加減で加熱するためには低温調理器は必須の道具です。とはいえ、赤い部分のある肉を食べることに抵抗のある方や、ジビエ肉やレバー等の内臓肉に硬さや臭みを感じたことのない方は、まったく必要ない器具と言えます。

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