以前、鴨池観察館で多数のカモを見てきたことを記事にしました。
で、その時に、この本を購入していたんですよね。
正直、その後いろいろと忙しくなって、この本を買ったことすら忘れていました。
で、ようやく生活に落ち着きが出てきたので、改めて読むことができました。
さて、久しぶりに書籍案内人の登場です!!
まあ簡単にざっくりと内容を説明します。
昭和20年1945年に敗戦国となった日本を統治するために、GHQが乗り込んできます。
そして、地元の人間が様々な思いで守ってきた「片野鴨池」で、アメリカの軍人が、遊びとしてハンティングいわゆる銃猟を行ったわけです。
この愚行を止めるべく、捕鴨組合長の村田安太郎がGHQ本部に直訴して、片野鴨池を守ったという話です。
で、この本のメインは現存する資料の提示と安太郎の活動の遍歴を後世に残すためのものです。
つまりですね、通して読んで、面白い本ではないということです。
ちょっと語弊がありますね、部分部分で非常に心が揺り動かされるほどの感動を覚える場面があるのですが、歴史的な事実の羅列も多く、小説のような読み物として起承転結があって、最後の最後まで読む手が止まらないような本ではないということです。
で、私が個人的に心を鷲掴みされたところを述べていきます。
まずは村田安太郎さんの風貌ですね。
昭和24年秋に撮影とのことです。本文内でも「古武士のような風貌」とたびたび書かれています。
背中に背負っているのは「坂網猟」で使う坂網です。
確かに銃も剣も持っていないのに、武士にしかみえません。
しかしこれは明治維新後の写真ではなく、昭和の写真なんです。
にもかかわらず、ここに写っているのは紛れもなく「武士」の魂を持っている人物です。
この写真に撮られた時の年はちょうど70歳だったそうです。
私はこんなかっこいい爺さんになりたい・・・そう感じてしまいました。
間違いなく男としての「生きざま」ですね。ちゃんと70年自分の信念を貫き生きてきた男だからこそ、積み重ねた経験が風貌に現れるのでしょう。
令和の時代にも、かっこいい爺さんはいます。いるんですけど「古武士」っているんでしょうか?まあ見た目だけなら格闘会、例えば合気道の師範とかにいそうですね。でも安太郎さんはただの猟師です。武士のように強さを求め続けて生きてきた人間でもないのに、見た目が「古武士」と言われるほどのオーラを纏う生き様を生き抜いてきた人物です。
いやーーーー!!すごい!!
日頃、つまらない悩みでグチグチ言ってる自分が小さく見えて嫌になります。
さて、次に感動したのは「前書き」です。
この本を作った保存会が、とてもユニークなのは、その会に、意見や主義主張がことなり、利害が相反してきた人々が一堂に会したことである。
本文抜粋
具体的には捕鴨組合員・日本野鳥の会・市長・警察署長・一般市民や芸術家・有識者に混じった研究者、文筆家が、この本づくりのために参加したとのこと。
簡単に言うと、カモを獲る側の人間と、カモを守る人間がタッグを組んだ保存会だったとのこと。
これは、感動でした!!
安太郎さんの功績を残したい!!って思いが、日頃の主義主張を超えて団結したということです!!
この本の発行年月日を見ると「2008(平成20)年11月15日」となってます。
つまりこの本は昭和に作られた本ではなく、平成に立ち上がったプロジェクトのもとで作られた本だということです。
たった13年前の話です。
なんか最近せちがなく生きづらい世の中に変化してきたなあ・・・って思っていたのですが、いわゆる日本人らしい結束の仕方を垣間見た瞬間に見えました。
まあ、多分今の若い世代は、安太郎さんの功績のすごさがピンと来ないかもしれません。
戦争で日本がアメリカに敗れたこと自体、まったく実感ないと思います。
そのために「戦勝国」と「敗戦国」の、当時の屈辱的なリアルが理解できないでしょうね。
学生の皆さんにわかりやすく伝えると、イジメる人間とイジメられる人間の理不尽な力関係はわかるでしょ?
それが当時、戦争に負けるということは、イジメる国とイジメられる国が、公然の世界として成り立つわけです。
安太郎さんの功績は、敗戦間もない時期にGHQに戦勝国に直訴して認めさせたことなんです。
本当にすごい!!
あの当時、安太郎さんは不可能を可能とした「古武士」でした。
それを写真の横顔1枚で、その偉業を納得させられるだけのオーラを放つわけで。
なんか、鴨池観察館で良い出会いがいくつもありました。
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