改良版「ボタン鍋」を作ってみた

ジビエ料理を全く知らない人間なら、イノシシ鍋、いわゆる「ボタン鍋」はかなり珍しくゲテモノ料理に近いのかもしれません。
でもですね猟師の私にとって、ボタン鍋風の猪肉の煮ものは今までずいぶん作ってきたので、取り立てて記事にするほどの料理ではないことは重々承知です。
それでも今回記事にしたのは、個人的に私自身、イノシシ肉は「焼き」ばかりで、「煮る」のはかなり久しぶりです!!
で、イノシシのヒレ肉を本当に久しぶりに「鍋仕立て」にしてみたので、記事にしてみました。
あっはっは!前期は黒猫さんのおかげで、まだイノシシ肉あるんですよね。
もちろん、久しぶりの煮料理ですが、今まで培ってきた知識と経験をいかした鍋料理となったので、改めてボタン鍋的なレシピを紹介したいと思います。


さて、まずは私のイノシシ料理の中では定番の下処理「重曹食塩水」で解凍しています。
使った部位がヒレ肉で、量が少なかったので、
水400ml:食塩小さじ1杯:重曹小さじ1杯
で、全体が漬かりました。

で、料理前に処理したイノシシ肉の食塩と重曹をさらし水で抜きます。
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その間に、具材を切ります。鍋の具材はこんな感じ。
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白菜・ヒラタケ・焼き豆腐です。
で、鍋の出し汁のレシピは、水・日本酒・合わせ味噌・しょう油・黒砂糖・ほんだし、各適量です。
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適量ですけど、基準は味噌汁です。
味見してみて、普通の味噌汁よりほんのちょっとだけ濃いかな・・・って味付けが目安です。
そこに最初に白菜の芯の硬いところを入れました。これも私が鍋を作るときの定番的手法です。白菜の芯の硬いところがクタってなっているのが、私は好きなので、できる限り最初に入れます。
で、味付けの話に戻しますが、想像してもらえるとわかりやすいのですが、通常の味噌汁に牛肉入れて牛鍋にしても、そのまま食べても絶対的に味が薄いことは理解できます。だから鍋は「つけだれ」が必須で、家庭料理なら「味ぽん」に「もみじおろし」ってのが定番になるわけです。
それが鍋料理です。今回は鍋料理なので、最終的塩味は味ぽんで調整です。

話をイノシシ肉に戻します。
塩重曹抜きしたイノシシ肉を、できる限りの薄切りで切ります。
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そのスライスしたイノシシ肉を出し汁に投入。
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沸騰するまでは強火で、沸騰前に中火にして決してグラグラ煮立たせないようにします。
まあ、それでもオーブンで焼いているスフレのように、こんもりと盛り上がるくらい灰汁が出ました
笑っちゃうほどの灰汁取り作業が続いたせいなのか、笑っちゃうくらい写真がブレました
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灰汁を神経質にすべて取りきる必要はないですが、まあある程度は綺麗にします。減った水分は日本酒で補います。
で、灰汁をある程度取り切ったら、このまま弱火で20分ほど煮ました。

ここら辺の煮込み時間の設定は難しいところですね。通常のシシ鍋用の肉は冷凍肉を薄切りしてます。それならすぐ火は通るし灰汁も一瞬でしょう。
しかし今回は解凍処理をしているので、スーパーの薄切り肉の数倍の厚さです。
弱火20分設定は、煮汁のしみ込みと肉の多少の煮崩れを狙った調理時間です。

で、その後、具材を入れて火を通すだけで完成。

イノシシ肉の味噌仕立てです!
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写真は、具材を入れた瞬間なので、本当なら完成ではないのですが、あとは多少煮込んで、このまま食卓に出して、お玉で小皿にすくって食べただけなので、鍋料理としては完成です。

煮汁に味ぽんと一味を加えて食べました。
なるほどなあ、旨くなったなあ!
煮料理でも重曹食塩水処理効果は効いています!
イノシシの硬さと臭みは多少残りつつも、ちゃんとジビエ料理として成り立つ美味しさです!
そしてなにより野菜が旨い!ほんだしだけでは到達できない旨さがあります。

そうなんですよね、焼き料理は、肉本来の旨味をストレートに味わう料理法であるなら、煮料理は、肉の旨味が抜ける分、煮汁を通じて副菜が旨くなる料理法です。
逆に言うと、適当な処理の臭いジビエ肉で煮料理作ると、副菜すべてが臭く不味くなるというわけです。
久しぶりに、イノシシを煮料理しましたが、なかなか上手に作れたと自画自賛です。





さて話は変わりますが、先日とある猟師先輩と話す機会がありまして、
「イノシシもシカもカモも、硬いし臭いから、家族もよう食わん。」
って話されていて、私は適当に「そうですよね。」って相槌打っていたのですが・・・やっぱりそうは思えません。
ジビエ肉は個性が強いのであって、その個性をちゃんと間引き、その個性を目立たせない料理法さえすれば、スーパーの家畜肉とある程度は変わらないくらいのレベルで食卓に上がる料理になります。
そんな料理を、このブログではいくつも証明してきたつもりです。

私は、生き物を殺したいために猟師になったわけではなく、ジビエ肉を得たいがために猟師になりました。
頂いた命は、今後も美味しく食べる努力は、当たり前ですが続けます。
まあ、料理の腕前に、狩猟の腕前がメタメタ追いついてないのが現状なのですけどね







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