最近、名古屋ですげえ素敵な絵と、すげえ面白い画家さんに出合いました。
で、画家さんとの出会いをきっかけに、なぜかわかりませんが私自身の古い古い昔話を思い出しましたので、なんか語りたくなりました。
今回は単純に個人的昔話です。
今から30年ほど前の話です、当時大阪に住んでました。
何の用事で難波辺りをふらついていたのかは全く覚えていませんが、入場無料の個展の看板を見つけました。
これは私の生まれ持っての性格かもしれませんが、
「見るのも無料、見ないのも無料」
ってなると、とりあえず見てみるってことを選びます。
食わず嫌いが嫌いで、食って嫌いを良しとします、若い時から。
さて、無料の個展に入ってみました。
会場はバレーボールのコート程度の大きさで、入り口以外の3面に作品が飾られている感じ。
作品はA5からA4程度の小さな作品ばかりで、鉛筆で書いたラフばかりだったと記憶しています。
で、色々見て回った中で横並びに2つの見た目はほぼ同じ構図の鉛筆ラフの少女の絵がありました。
そこで私の目が留まりました。
まずは瞬間的に違和感を覚えたために立ち止まり、その2つの絵を眺めているとその違和感の理由が自分の中でハッキリしてきて、それが自分の中で確信に変わると、ラフのレベルの高さに感心してしまいました。
「何か気になる作品はありましたか?」
声をかけられて振り向くと、ハットをかぶった老紳士が立っていました。
「なんかね、この2つの絵が対照的で面白くて見入ってしまいましたね。」
って無邪気に答える私。
「何が面白いと感じたのですか?」
「2つの絵はほぼ同じ構図だけど、左の絵は人間の女の子で、右の絵は少女の人形ですよね。左は生命感ある人間の女の子ですけど、右は生きている感じがまるでしない。でも死体の感じでもないから人形ですよね。鉛筆だけのラフだけど、輪郭だけでそんな繊細な状況を描き分けられるテクニックが凄いなあと思って。」
急に顔色を変える老紳士、
「失礼しました!あなたはこの世界の方ですよね?」
「あっはっは!全然違いますよ、絵心ないけど絵が好きなただの素人ですよ。」
「そうなんですか?!実は私は美術専門学校の校長をやっている者です。」
「ああ、それはそれは私みたいな一般人が偉そうなことを語って失礼しました。」
「面白いって言っていただいたラフは、実は私が書いたものなんです。」
「ああそりゃ、ちゃんとしたプロが描かれた絵だから、私みたいな素人でも区別がついたんですね。」
「いやいやいや!!うちの生徒でもその2つのラフ、人間と人形の見分けがつかない生徒がほとんどなんです。それを当たり前のようにさらりと言い当てられたのが、本当に驚きなんですよ!!」
「あっはっは!多分生徒さんからすれば、校長先生の描かれた絵に対しての感想なんて、忖度し放題で本音なんてなかなか言えないと思えますよ。それが自由気ままな私と生徒さんの違いですよ。それよりもやっぱり私みたいな素人でも詳細までわかるように描かれた校長の技術のほうが凄いと思いますよ。」
この後も、色々会話したと思いますけど、何分ずいぶん昔のことですし、私が印象に残って覚えている会話がここまでです。
ただ、この昔々の会話を名古屋からの帰りの列車の中で、本当になぜだかわかりませんが鮮明に思いだしました。
正直、この校長先生との出会いを記念して、校長の作品を買いたかったのですが、掲げてあった作品の中で、私の中で一番良かったと感じた作品が、少女の裸婦像のラフでした。確か3万5千円でした。安くはありませんでしたけど、買えない額ではありませんでした。
これも正直、その後の校長とのつながりを保ちたい気持ちも強かったのですが、そのためだけに自宅に裸の少女の絵を飾る勇気がありませんでした。
でもまあこの年になって思うと、あのトラップを攻略した思い出として、あの少女の裸婦像は買っておくべきだったのかな・・・遠い目
最後になりますが、私はなぜか若い時からすべての芸術に関して、他人が値踏みした金銭的価値観とか、他人が評価した文化的価値観とか、全く興味がありませんし、今でもそうです。
芸術って世の中で一番自由な価値だと思ってます。
芸術の価値は人それぞれ、その作品で自分がどれだけ感動させられたのか?!ってことだけで決まると思ってます。
以上、そんな体験記と私自身の性格を振り返ってみました。
P.S.本文の校長のような絵画トラップを、記事をここまで読んでくださった皆さんにも1つ仕掛けてみます。
「ミレー」「オフィーリア」で検索かけてください。水に浮かぶ美女の絵です。
さて、彼女は生きているように見えますか?死んでいるように見えますか?
この絵を初めて知った時は、本当に瞬間的にドキドキしましたね。
素晴らしい作品です・・・が、校長の少女の裸婦像と同じで、家の中に飾りたいとは思いません。タダで譲ると言われても、私は要りません。
私は原画を買うこともありますが、まずは作品との出会いと共に、その作品が我が家に必要かどうかも考えます。
そういう意味で、ピカソのどの作品も我が家には要りません。
逆に有名どころの好きな作品って言われると、真っ先に思い浮かぶのが「ルノアール」「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」です。検索かけて見てもらうとわかりますが、印象派独特のふわりとした作風の中、瞳がいいですね!顔つきだけで幼子とわかります。この絵なら家に飾っても良いです。
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